思いつくまま ヒーロー回顧懐古「アイアンキング」

石橋正次、浜田光夫が贈る

石橋正次さんが「夜明けの停車場」などのヒットを飛ばしていた1972年、 往年の銀幕青春スター浜田光夫さんと共演した特撮ヒーローものがありました。
「アイアンキング」がそれです。
日曜日よる7時に登場したこの作品は、お二人のキャラクター、風変わりな(?)設定により、子供番組としても一種独特な雰囲気を持つものとなりました。

まず、出演者

よくこの二人があの時代に「このて」の作品にでたなー。と、今でも思ってしまいます。
また、女性ゲストも盛沢山で夏純子さんやテレサ野田さん、大川栄子さん、岡崎友紀さん、坂口良子さん・・・と、これまた「よくでたなー」のオンパレード。
脚本の佐々木守さんの「つて」と、どこかで読みましたが、これはまさしくこの作品の特筆すべき特徴でした。

その設定

主人公「静弦太郎」(石橋さん)は国家警備機構の特別隊員。
彼は同じく特別隊員の霧島五郎(浜田さん)と共に日本を覆そうとする敵と戦います。
ここで普通だと、いかにも弦太郎がアイアンキングに変身しそうなんですが、そうではなくてアイアンキングになるのは作品中おとぼけ役に徹している五郎の方。しかし、主人公はあくまで弦太郎で、アイアンキングは弦太郎のピンチを救うために登場するのです。
弦太郎のセリフ「残念ながら俺達は二人で一人前なんでね」が、ヒーローの登場イコール事件の解決と言う普通のパターンを取っていないことの何よりの証しでしょうか。
この二人の関係にこそ、 この作品の「味」が隠されているようです。
さて、静弦太郎は主人公。ではアイアンキングに「まさるとも劣らない」活躍をする必要があります。それを助けるのが謎の武器「アイアンベルト」。
それは普段シャープペンシルほどの大きさですか、いざ戦いとなると光と共にシュルシュルと伸びてサーベルになります。
さらに敵のロボットとの戦いでは鞭になり(!)身長45メートル強の敵をひっぱたく(!!)という荒業をやってのけるのです。
まさに「自由に伸びて自在に縮む鋼鉄の鞭(ソノシートドラマのセリフより)」
主人公が繰り出す鞭にひっぱたかれて、敵の巨大ロボットがダメージを受ける(!?)描写など、他のどの作品でお目にかかれるでしょうか ^^)
地球を守る組織が存在し、数々のメカを使って怪獣に立ち向かうというパターンに慣れ親しんでいた私には、この、「組織はあるけどメカがでない、武器と呼べるのはアイアンベルトぐらい(初期の頃は五郎がキュロットガンという光線銃を持っていました、でも発射したのは3回くらい)」という世界はかなり新鮮に写ったものでした。

そして、敵

全26話中三つの敵が登場します、三つめこそタイタニアンという宇虫人(宇宙にもカマキリや、ゴキブリがいるようで・・・)なんですが、あとの二つと言えば、大和民族に迫害され二千年のうらみを抱いた「不知火族」。大和政府を覆し自分たちの理想を達成しようとする革命集団、「独立幻野党、またの名を幻兵団」
世界征服をねらうのではなく、日本を乗っ取ろうとする、こころざしの低い(?)敵達、しかしこの独特な設定を生かして子供相手とは思えないような名場面が多く生まれました。

いいんだよこれで、これでいいんだ

独立幻野党員の恋人を持ちながら、弦太郎にほのかな思いを寄せる女性令子(演じるは夏純子さん)。弦太郎は令子を思っているそぶりをみせ、幻野党の基地の場所を聞き出します。
基地を破壊し令子の恋人を死に追いやる弦太郎、最後にそれが芝居だったことを令子に告げます。
「ばか、静弦太郎のばか!」
弦太郎の腕をナイフで刺す令子。
「どうしてほんとのこと言ったの、だまされていることは最初から分かってたのに・・・。だまし続けてほしかったのよ!」
泣きながら走り去る令子、弦太郎の傷をかばう五郎。
「弦太郎だいじょうぶか、ばかだなぁ、避けようとおもえば避けられたんだ。」
「いいんだよこれで、これでいいんだ。」

変身していられるのはわずか1分、他とくらべて「弱いヒーロー」というイメージの強かったアイアンキングは、しかし他にはない魅力を満載した特撮ヒーローものだったのです。
1994/6/17 (2017/10/05 加筆修正)

21世紀のあとがき

アイアンキング本放送当時は小学6年でした。やはり小学生にはわからないお話が結構ある「独立幻野党編」は、いまいちな感じを持っていました。
しかし大人になってLD(レーザーディスク)で観なおした時は、その設定に驚いたものです。
小学生当時、そのころにはわからないお話があったとしても、弦太郎の「主人公とは思えない冷たい言動(敵を倒すには犠牲はやむを得ないなどの)」や、それでいて五郎とかわす軽快なやり取り。何より6話までは光線を使わない「弱い」アイアンキングなどに強烈な印象を受けたものでした。

本文は1994年頃に、ある情報誌用に書いた原稿に手を加えたものです。
それから23年余り、21世紀になっても、本放送から45年たっていても、円谷作品大好きの私が「やっぱりこれがいちばんすきだ」と、今でも思う,不思議な雰囲気を持つお話しです。
2017/10/13

ABOUTこの記事をかいた人

「LR総合開発研究所」所長、通称 先生。 ラブレイブを舞台裏でサポートしています。 「仮面ライダー」はもとより、「ウルトラQ」もリアルタイムで体験した世代です。(笑)